炭水化物制限(炭水化物抜き)は危険との意見がありますが、本当に危険なのでしょうか? 炭水化物制限の安全性について考えてみます。

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炭水化物制限の安全性

一般的に、「炭水化物を抜くと体に悪い」と言う意見があります。皆さんも心配なのでは。

炭水化物摂取制限について疑問を持たれている方は、少し長いですが、このページを良くお読み下さい。

「良く分かった。炭水化物の摂取量を減らした方が良い。」という方は読み飛ばして頂いて結構です。

炭水化物抜きが危険と言われる理由

「炭水化物抜きが危険」と言われる理由を以下に列挙します。

これらは、「常識」として、良く言われることですが、「なぜ」「理由は」と言われると、答えることができない人が殆んどではないでしょうか。

色々調査してみたのですが、明確な根拠はなかなか見当たりません。

五訂増補食品成分表の2004年版に記載されている「第六次改定日本人の栄養所要量-食事摂取基準-(解説)」の「5. 炭水化物(抜粋)」によると、総エネルギーに対する炭水化物の割合は少なくとも55%以上が望ましく75%以下でないと、他の栄養素(蛋白質、アミノ酸)の摂取量が少なくなるので、望ましいのは55%以上75%以下である、旨の記述があります。しかし、根拠については「エネルギーに少なくとも55%を各種の炭水化物から供給する食事は、体脂肪の蓄積を低減することが報告されている。」としか記載されていません(抜粋だからだと思うのですが)。この研究の詳細については全く解りませんが、疫学的調査であれば、慎重にデータ-収集及び解析を行わないと、結果にノイズが入り込み、正しい結果が得られない場合があります。特に、一つのことだけに注目した調査は、他の条件も変化してしまい、間接的な影響で全く逆の結論となる危険性があります。これは憶測ですが、この根拠としている研究はかなり古い時代のものであり、現代の研究からみると稚拙な部分もあった疑いもあります。

また、「炭水化物摂取量」の節でも紹介した通り、「日本人の食事摂取基準(2005年度版)」では、根拠が変わっています。

ここまで糖や脂肪の代謝のメカニズムが判明している現代において、古い疫学的調査の結果を信じる必要は無いのではと思うのは私だけでしょうか?

科学の進歩は目覚しく、次々と新しい事実が判明しています。過去の常識を覆すような新事実も当然出てきます。これまで常識とされてきた事についても、再度評価しなおす必要があるのではないでしょうか?

従って、私は、全エネルギーのうち炭水化物が50%以上で無ければならないと言う常識/主張を疑いします。

この事は、「学校で習った常識」といっている人がいますが、「学校の教科書」でもいい加減な部分があることは、周知の通りです。新しい事実が判明し、教科書が書き換えられる必要があるのに、対応が遅れることは多々あります。昔、正しいとして教えられていたことが、現在では間違っていることもあります。

古い権威のある研究や常識を鵜呑みにするのは危険

私が言いたいのは、この表題の言葉です。日本人は、特にこの傾向があるように思います。過去に学習した内容を盲信し、それを拠所として生活しているのではと考えたのです。つまり、古い考えに執着するのは、今までの自分の考えや行動を正当化しつづけたいと言う自己防衛の心理が働いているのではと推察します。時には、この心理は役立つのですが、新しい事実を受け入れられなくなる危険性もあります。

本当に優秀で、何時の時代でも活躍できる人は、自分の考えが間違っていたときにはそのことを素直に認め、新しいことをすぐに吸収し、すばやく方向転換が出来る人ではないでしょうか?

このサイトのトップページで、「天動説」と「地動説」を喩として紹介しました。「天動説」と「地動説」どのような経過を辿ったのか、良く思い出してみてください。私の言いたいことが少しはご理解頂けるかも知れません。

炭水化物を制限しても安全な理由

糖新生

人間を初め殆んどの高等動物には「糖新生」なるプロセスでブドウ糖を合性する能力があります。血中のブドウ糖量が不足すると、インスリン分泌量が減少しグルカゴンの分泌が増大して、グリコーゲンの分解、アミノ酸等からの糖新生等で血糖値を一定値まで戻そうとするように体内で調節されます(恒常性=ホメオスタシス)。

炭水化物の比率50%というのは、おそらく1日に筋肉や脳で消費されるエネルギーを考えた数値なのだと思います(詳しくはわかりません)。しかし、後述するように、体細胞はケトン体をエネルギー源として利用できますし、糖新生もあります。炭水化物を全く採らなくても原理的には生命維持は可能な筈なのです。

糖新生は肝臓を疲れさせる?

とあるサイトで、「炭水化物摂取制限を続けると、肝臓が疲れる」という記事がありました(申し訳ありません、出処失念しました。また、ここではその記事に反論するので、サイトを晒すのは控えたいと思います。)。これには一理あると思います。雑食性を獲得した人類(ヒト)は、炭水化物の摂取量が増えてきており、糖新生は通常は頻繁には起きなくなってきているので、糖新生が増える状況は不自然な状況であり肝臓にとって負担であるということでしょう。

ですが、人間(ヒト)の肝臓は(体に対して)決して小さくはなく(申し訳ありません、はっきりとした根拠が示せません)、上記だけで、「糖新生」は肝臓に負担であると結論付けるのは無理がありそうです。むしろ、体にとって毒であるアルコールや、自然界に存在しない「合成着色料」「合成保存料」「トランス脂肪酸」(これはちょっと違うかな?)「薬物」(煙草に含まれる有害物質や農薬、医薬品など挙げると切りがありません)の分解の方が肝臓の負担となっているのではないでしょうか。肝臓への「糖新生」の負担を気にする前に、上記に示した「自然界に存在しない物質」を先に気にすべきです。

むしろ、「糖新生」は、動物が数億年の年月を掛けて進化し獲得してきた、基本的な能力であると思うのですが...

さらに付け加えると、後述する「フォアグラ」の例があります。炭水化物の過剰摂取は、肝臓にダメージを与えるのです。

ケトン体

体内でエネルギーを運ぶ物質はブドウ糖(グルコース)とケトン体です。ブドウ糖だけではありません。「アトキンス本」の「新ダイエットにまつわる誤解」の章にて、体細胞のエネルギー源についてのハーバード大学での研究が紹介されています。生きている脳細胞をグルコースとケトン体で培養した所、ケトン体の方でも脳細胞は生き延びようとしてケトン体をエネルギー源として使ったそうです。またその他の体細胞においてもブドウ糖よりケトン体を好む傾向が見られたとのこと。

以外にも、「脳細胞のエネルギー源はブドウ糖のみ」と言う常識を覆す内容です。

かといって、人間の脳にブドウ糖が必要ないかというと、それは解かりません。現段階では、「必要」としておきます。ですが、必要な分は糖新生にて賄えるのではないでしょうか?

PET(Positron emission tomography=ポジトロン断層法)と言う技術があります。脳の活動を調べる際に、放射化(ちょっと表現が適切でないかもしれませんが)したグルコース(FDG)を用います。これが機能するということは、脳内で、グルコースが活発に代謝されていることが前提となります。

参考: ポジトロン断層法(Wikipedia)

人間は飢餓に耐えられるようにできている

人間は飢餓に耐えられるようにできています。でないと、有史以前にとっくに絶滅しています。特に氷河期は食糧の確保が難しかったと想像されます。1,2週間程度は食餌にありつけなかったのではないでしょうか。1,2週間何も食べられなくても行動して食糧の確保ができていたと考えられます。

身近な例があります。災害等で瓦礫の下に生き埋めになった人が2,3週間後に救出されたとの報道を目の当たりにしたことがあるでしょう。現代人でもある程度条件が良ければ、1,2週間程度は飢餓に耐えられるというのがわかります(勿論、体は衰弱していますが)。

人間が肥満になる理由は、この「飢餓対策メカニズム」が過剰に働いた事が原因です。元々少ない食糧でも生きられるような体の仕組みがあるのに、必要以上に栄養を摂取するので、肥満になるのです。

念のために書き添えますが、「飢餓対策メカニズム」があるからといって、「断食」してはいけません。「生命維持は可能」というだけで「体に良い」訳ではありません。

人類(ヒト)は元々肉食だった?

以外に思われるかもしれませんが、これは事実のようです。「何を言っている。我々日本人は農耕民族だ」と言われる方もいらっしゃるかも知れませんが、その程度の時間スパンでの話ではありません。もっと長い時間スパンでの話です

「4・3・3ダイエット」のまえがき「肥満は神の誤算か?」に詳しい事が記載されていますが、人間(ヒト)を含めた哺乳類共通の祖先は元々肉食で、次第に雑食性を拡大させていったようです。「アトキンス本」でも、石器時代の人類の狩猟道具を例に挙げ、人類は肉食であったのではないかと推察しています。

これが事実とするならば、元々肉食であるのに、無理矢理大量の炭水化物を摂取していることになる訳です。体に異常を来すのも無理は無いと思いませんか?

不自然な炭水化物を大量に摂取しているのは「人間」と「家畜」だけ

私は、哺乳類の中で炭水化物を大量に摂取しているのは「人間」と「家畜」だけのように思います。

一部の動物、例えば蜜蜂や果物を主食とする哺乳類や鳥類などは炭水化物摂取量は高そうです。しかし、一般に草食と言われる動物(野生のですよ)が食べる物を見る限り、そんなに炭水化物が多いようには見えません。また、自然界には炭水化物が極端に多く含まれる物は殆んどないと思います。炭水化物を大量に摂取しているのは、砂糖や、「品種改良」されて炭水化物含有量が多くなった穀類(米、麦、とうもろこし、その他)を食べている「人間」と、人間に飼われている「家畜」ぐらいでしょう。

「シュガーバスター」では。「古代の人々は砂糖という言葉さえ知らなかった」という見出しで、砂糖や精製された炭水化物の弊害を説いています。つまり、現代人は自然界には存在しなかった「精製された炭水化物」を大量に摂取している、と言う訳です。

霜降り牛肉、フォアグラ

何故「霜降り」や「フォアグラ」の話が出てきたのか、不思議に思われるかもしれません。考えて頂きたいのは、「霜降り」や「フォアグラ」を作り出すのに、どのようなことが行われているか、と言うことです。

一般に、食用牛は、出荷前に「肥育」といって、大量の穀物(以前は「肉骨粉」も与えられていましたが「狂牛病」の原因とされたため、現在では行われていないと思います)を与え、太らせます。日本では、良い霜降りを作り出すために、ビールを飲ませたりするようです。

フォアグラはガチョウの肝臓ですが、ガチョウを狭い場所に閉じ込め運動できないようにし、大量の穀物を無理やり与える(強制給餌)ことにより、「脂肪肝」を作り出しているのです。

このように、家畜(特に食用)は自然界には無い餌を大量に与えられ、不自然な太り方をさせられているのです

自然界には無かった「精製された炭水化物」を人間が大量に摂取することは不自然なことだと、私は思います

「精製された炭水化物」を大量に摂取していると、霜降り(肥満)やフォアグラ(脂肪肝)になってしまうかもしれません(いや、かなり高い確率でそうなると思います)。

参考: フォアグラ(Wikipedia)

炭水化物の過剰摂取は、血糖値の恒常性を破綻させる

一部の書籍やWebSiteでは、「炭水化物を摂取することで、血糖値が安定化する」旨の記述があります。このことを盲信している人はかなり居るように見受けられます。しかしながら、最近の研究では、その逆が指摘されていることは前述しました。

人間に限らず殆どの高等生物の体内では、血糖値が上がるとインスリンが分泌され、逆に血糖値が下がるとグルカゴンが分泌され、それぞれの効果により、血糖値が最適な一定の値に保たれるようになっています。しかし、過剰な炭水化物の摂取は、血糖値の急上昇を招き、これらのバランスが崩れることは、「理論」の「何故太るのか」で説明しました。

このような状態が長く続くと、肥満になるだけでなく、細胞のインスリン感受性が低下しインスリンの効果が無くなるばかりでなくインスリン分泌過剰症になることもあります。それだけでなく、インスリンの過剰分泌が続くと、インスリンを分泌する膵臓(すい臓)が疲労し、インスリンの分泌量が低下することにも繋がります。このような状態を「Ⅱ型糖尿病」と呼ぶのは皆さんご存知と思います。

正直申しますと、肝臓の疲労よりも、膵臓の疲労の方が心配です。

人間が一生の間に分泌できるインスリンの量は決まっているという迷信みたいな説もあります。もし本当であれば、インスリンの大量分泌を続けると、いつかインスリンが分泌されなくなり、最悪死亡する可能性があります。このような事態になってしまった場合、生命をつなぎとめるには、インスリン注射を一生続けなくてはなりません。(膵臓の再生医療に期待したいです。)

このようなことを考えると、肝臓の疲労など大したことでは無いように思いませんか?

炭水化物の摂取をコントロールすることは、血糖値を安定させ、脳の働きも安定化させる

上述の「炭水化物の過剰摂取は、血糖値の恒常性を破綻させる」の中で「炭水化物を摂取することで、血糖値が安定化する」旨の記述があることを紹介しました。この主張に関する根拠を探したのですが、やはり私の調べた範囲では見つかりませんでした(私の調べ方が悪いのか...)。この主張に関しても、根拠が希薄であるように思えてなりません。むしろ、その逆のような気がするのは私だけでしょうか? ここまでこの文章を読んで頂いた方には、私の意見に賛同していただけるのではないかと期待しています。

むしろ炭水化物の摂取を控えるべき

炭水化物の摂取を減らすことが危険ではないばかりではなく、むしろ、炭水化物の摂取過剰は危険です。これは「理論」の「なぜ肥満になるのか」でも説明した通りです(上記の「霜降り」と「フォアグラ」も良い例です)。また、炭水化物の摂取を控えることで、炭水化物摂取過剰により発生した様々な疾病を治すことも可能と主張されています。

次の節では、低炭水化物ダイエットと難病、生活習慣病の関係について説明します

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